東京本社受付パネル展示のご案内
現在、カールツァイスジャパングループでは、社内公募による定期的なフォトコンテストをおこない、最優秀作品をパネルにして東京本社受付に展示しております。

今年は「アポロ11号」が月面着陸をして40周年を向かえる事により、社内公募でなく、この事業を記念する写真を選びました。
このアポロ計画において、カールツァイスはNASAと協力のもと、多くの感動的な写真を皆様方に提供させて頂いており、今回、この際に撮影された月面写真を受付にパネルとして展示させて頂きます。
是非、東京本社をご訪問の際には、このパネルをご覧頂けますよう宜しくお願い致します。


『宇宙からの「世紀の画像」』
ウルフ・メルボルト(ドイツ人宇宙飛行士)
ツァイスレンズが生んだ不朽の月面写真

月への宇宙飛行アポロ計画の間に撮影された写真は、今日もなお世界中の人々を魅了しています。
40年前、アポロ11号の宇宙飛行士たちはカールツァイスのレンズで初の月面着陸写真を撮影しました。
その鮮明度、解像度、コントラストは依然として感動的です。
これらの写真はNASAの宇宙計画が支持を維持するために重要な役割を果たしてきました。
そしてドイツ人宇宙飛行士ウルフ・メルボルトの心にも深く焼き付きました。

月への有人飛行に際しては、特殊仕様のカメラとレンズが製作され、厳しいテストが行われました。
NASAが宇宙での使用に初めて成功したツァイスレンズは、中判用のプラナー2.8/80mmです。
ヒューストンのカメラ店でハッセルブラッドのボディと共に購入しました。
1962年の10月、ウォルター・シラーはこの市販機材を持って宇宙飛行に旅立ちました。
ミッション中の飛行士は動作が制限されるので、軽量化および操作を容易にするための改造がわずかに必要でした。

初飛行での画質に納得したNASAは、宇宙飛行に合わせたカメラの改造、および特殊条件を満たすカスタムメイド・システムの開発を決定しました。
カールツァイスでは、科学者たちが、真空状態での使用によりレンズの光学特性がどう変化するかを調べていました。
空気のない状態でレンズ間スペースの屈折率が変わらないか、また、曲率半径にわずかな変化が生じないかを突き止めたかったのです。
このため、画角が90度で全体像を撮るのに理想的なビオゴン4.5/38 mmを使い、レンズエレメント間のスペースをエレメント自体と同じ精度で計算しました。


さらに、レンズ群の貼り合わせに使う光学セメントは、いかなる状況でも蒸発しないようにすることが必要でした。
絞りやシャッターの機械部品に従来の潤滑油を使うことも、結露が発生してガラス面に付着する危険があるので不可能でした。

月面での撮影用には、「データカメラ」と呼ばれるモデルが特別に製作されました。
このカメラには非常な高精度で測定点を彫刻したレゾープレート(Reseau plate)という特殊部品が取り付けられていました。
これらの測定点は画像に写し込まれ、後で写真測量法により画像を評価するために利用しました。
このカメラのために新たに特別開発されたビオゴン5.6/60mmは、すばらしいコントラストと鮮明度を備えているだけでなく、歪曲を極限まで取り除いたレンズです。


3回の宇宙飛行(スペースシャトルで2回、ロシアの宇宙ステーション ミールへの滞在1回)に搭乗したドイツ人飛行士 ウルフ・メルボルト(Dr. Ulf Merbold)は、人類が初めての月面着陸を果たしたときにちょうど学業を終えたばかりでした。
メルボルトは母の隣人宅のテレビでこの驚異的なできごとを見つめていました。
まさに心奪われるシーンでしたが、将来、自分自身が宇宙に行くとは夢にも思いませんでした。
「当時は、ドイツ人が宇宙飛行に参加するなんて想像もできませんでしたから」
後に月面写真が出版されたとき、メルボルトの思いはとめどもなく膨らみました。
彼にとって、月面着陸船と砂漠のような月面風景が写った写真は「世紀の画像」です。

スペースシャトルのミッション中に、メルボルトはハッセルブラッドとツァイスレンズにすっかり馴染んでいました。
写真撮影は宇宙飛行士のトレーニングプログラムで不可欠でした。
「誰もが撮影機材を扱える必要があり、また、ミッションごとに10,000コマ分のフィルムが積み込まれました」
とメルボルトは説明しています。

1960年代の終わり、カールツァイスのカメラレンズスペシャリストは大きな問題もなくアポロ11号のための機材を整えました。
カメラレンズの光学設計部門を率いていたクリスティアン・ルートヴィヒは当時を次のように回想しています。
「私たちは想定できるかぎりの厳しい条件でシステムの機能性をテストしました。
プラナー2.8/80mm、テッサー5.6/250mmなど採用したレンズは、メカニカルな改造をしなくても大丈夫でした。但し、主にスケジュールの厳しさから、特別製作のビオゴン5.6/60mmの方は1つのチャレンジでした」

1969年から1972年にかけての6回の月面着陸で、撮影された写真は33,000枚あまりになります。
もしも将来、月への旅行をご希望なら、カメラを持って行く必要はありません。
宇宙飛行士たちは、レンズの付いた12台のカメラを月に残しているからです。
けれどもフィルムカートリッジをスーツケースに入れるのはお忘れなく。宇宙飛行士たちが地球に持ち帰りましたので!