ZEISS Webinar

生物の微細構造からの新たな発見

Volume EMがどのようにしてライフサイエンス研究を進めているのか

複雑な微細構造の情報は、volume EM(vEM)と総称されるSEMの技術や手法によって取得できます。研究と商業コミュニティ間のパートナーシップと共に科学が進歩したことにより、これらの手法が電子顕微鏡の経験が全くない人やほとんどない人でも、より簡単に使用できるようになりました。このウェビナーシリーズでは、vEMイメージングの技術的基盤と増加している応用分野を紹介いたします。vEM固有の試料作製を中心に、個々のvEM技術(Array TomographyシリアルブロックフェイスSEMおよびFIB-SEM)の詳細をご覧いただけます。

ウェビナーシリーズは、ワークフロー志向のソフトウェアソリューションの高度な画像処理、データ解析、そして結果の視覚化の機能の知見を紹介します。この6回シリーズのウェビナーにアクセスして、vEMにより推進されている神経生物学、がん研究、発生生物学、植物科学などの分野における新たな発見をご覧ください。

ウェビナーシリーズでは、以下のトピックについてご覧いただけます:

ウェビナー 1:Volume EMの概要
ウェビナー 2:Volume EMの試料作製
ウェビナー 3:Array Tomographyと組み合わせたVolume EMへの容易なアクセス
ウェビナー 4:シリアルブロックフェイスイメージングによる自動化されたVolume EM
ウェビナー 5:FIB-SEMによる精度の高いバランスのとれた高分解能微細構造
ウェビナー 6:Volume EMデータの画像処理と可視化

※ウェビナー動画は順次公開予定です。

ウェビナー 1:Volume EMの概要

講演者:

  • Kirk Czymmek, Principal Investigator, Director, Advanced Bioimaging Laboratory, Donald Danforth Plant Science Center

生物は本質的に3次元であるため、細胞小器官、細胞、組織および生物の空間関係を画像で取得し、可視化して測定することができるアプローチにより、多くの重要な生物学上の疑問に対する解釈や洞察をより向上させることができます。
つい最近まで、細胞/組織の容積をナノスケールレベルで画像取得することは、非常に困難で、効率が悪く、手作業の多いプロセスでした。数百または数千の連続切片を自動的に取得するイメージング方法であるVolume EM(vEM)が開発されたことで、個々の超薄切片を用いた従来の透過型電子顕微鏡(TEM)をはるかに超えて、3D細胞の微細構造の出力範囲が拡大しました。Array Tomography(AT)はイメージング方法の一つで、ウルトラミクロトームで作製したリボン状または多数の連続超薄切片を基板上(グリッド、スライドガラス/カバースリップまたはシリコンウエハーなど)に収集します。これらの切片は、抗体によるプローブやコントラスト向上のための重金属による染色、光学、透過または走査電子顕微鏡によりイメージングされ、今後の測定のための試料保存が可能です。
一方、シリアルブロックフェイス走査電子顕微鏡(SBF-SEM)は、走査電子顕微鏡の内部に取り付けられたウルトラミクロトームによりダイヤモンドナイフで樹脂包埋された試料の薄い表面の層を連続的に切削して、その後そのブロックフェイスをイメージングします。関連するブロックフェイスのアプローチでは、集束イオンビーム搭載走査電子顕微鏡(FIB-SEM)がイオンビームを用いて超薄層を切削し、高分解能の等方性3Dボリューム画像の取得が可能です。
ここでは、i) 主要なvEMのワークフローの概要、その機能と使用のタイミングの説明し、ii) 試料作製の基礎の説明、iii) 生物学上の疑問に対する回答例およびiv) vEMの理解と成果をサポートするvEMのサポートコミュニティの共有について発表します。

ウェビナー 2:Volume EMの試料作製

講演者:

  • Christel Genoud, Ph.D, Senior Lecturer, Faculty of Biology and Medicine & CEO of the Dubochet Center for Imaging. EPFL and Universities of Lausanne, Geneva, and Bern, Switzerland
  • Corrado Cali, Ph.D, Associate Professor, Department of Neuroscience, University of Turin, Italy
  • Jean Daraspe, Expert Scientist, Deputy Head, Universite de Lausanne

このウェビナーでは、試料作製からデータの取得・処理まで、Volume EMのさまざまな側面に及ぼす影響を紹介します。視野が複雑で広いため画一的なアプローチでは対応できませんが、このような場合でも共通の課題をはっきりさせ、考慮すべき必要な事項を明らかにすることを意図しています。このセッションは以下の3つに分けられています。
一つ目は、Christel Genoud博士が、固体化、コントラスト、包埋の種類などの因子が分解能、画像取得スピードおよび結果として取得された全般的な画質に及ぼす影響について掘り下げます。次は、Jean Daraspe氏が、画像取得と希望する結果という特定の目的を左右する、試料のマウントとトリミングの多様性を示す実践的な例を紹介します。切片またはブロック上の関心領域を標的とする戦略を提案し、マウント方法が帯電状態とイメージング状態の両方に及ぼす可能性がある影響について考察します。最後に、Corrado Cali博士は、顕微鏡写真の処理に重点を置いて、画像の解釈だけではなく、再構築の容易さにも影響を及ぼす試料作製について実例を示しながら解説します。博士は、前処理中の画像パラメーターの微調整が、さまざまな細胞型タイプの特定をどのように同定し、画像セグメンテーションタスクを向上させているのかを重点的に話します。
全般的にこのウェビナーでは、独自の研究ニーズにカスタマイズされた試料作製技術を厳密に評価し向上させるための具体例や知見を参加者に提供することを目的としています。

ウェビナー 3:Array Tomography:フレキシブルかつ容易に利用できるVolume EM技術

講演者:

  • Luke Noon, Ph.D, Principal Investigator, CIPF research institute
  • Corrado Cali, Ph.D, Associate Professor, Department of Neuroscience, University of Turin, Italy
  • Jemima Burden, Ph.D, Head of Electron Microscopy, University College London

Array Tomographyはvolume EMの技術で、連続した超薄切片を切削して基板に回収し、SEMでイメージングして、試料の3次元表示を作り上げます。この技術の性質が非破壊性であることと基板上の切片が安定していることにより、この技術は繰り返して実施される自動画像取得に適しており、ユーザーのニーズとデータ処理能力に応じて、無制限に新たな関心領域をイメージングできます。
最初にJemima Burden博士が、Array Tomographyのワークフローを紹介し、これらの手順がよりフレキシブルなvolume EMの技術の一つに寄与していることを示し、生物医学や臨床の研究者、コア施設や地域団体にもたらされる実益について共有します。
Ian White氏は、多くのEMラボが既に所有している標準装置と組み合わせて、どのようにしてArray Tomographyがある程度すべてのものに真にアクセスすることができるvolume EMの技術となるのかについて説明し、今後の研究でArray Tomographyの優れた技術の利用を開始するときに役立つ、多くのArray Tomographyのコミュニティで共有されている秘訣とこつの一部を紹介します。
最後に、Luke Noon博士が、研究者の立場から、肝臓の神経末端の記録と再構築のために、この優れた技術の利用により、肝組織のラボのサンプリング能力がどのように変わるのかを共有します。

ウェビナー 4:シリアルブロックフェイスイメージングによる自動化されたVolume EM

講演者:

  • Laura Matino, Research fellow, School of Medicine and Surgery, Università degli studi di Milano Bicocca

生物学的構造と機能を十分に理解するには、それらの元となる画像をより良く描写する3次元のイメージングが必要となります。シリアルブロックフェイス走査電子顕微鏡(SBF-SEM)は、スライスアンドビュー(slice-and-view)の自動化された方法でボリューム情報を取得する新たな機会を提供します。
このウェビナーでは、Volutome技術についてと分解能、スピードおよび自動化の技術向上にフォーカスして、SBF-SEM装置の飛躍的な進歩を紹介します。次に、3つの異なる染色手法をまとめて検討し、試料の保存と結果としての優れたコントラストを確保すると同時にスピードアップした組織の作製と比較します。最後のイメージング結果を最大限に生かすための戦略(マウント技術、焦点電荷補正による試料の放電など)を提案するほか、検討している3D再構築へのアプローチについても紹介します。

他のウェビナーも近日公開の予定

ウェビナーの講演者

Kirk Czymmek

Principal Investigator, Director, Advanced Bioimaging Laboratory Donald Danforth Plant Science Center

Kirk Czymmek博士は植物学と植物病理学の博士号を取得しており、光学、X線、電子顕微鏡や相関顕微鏡などの高度な顕微鏡技術に30年以上にわたり専念された経験があります。博士の業務は、細胞、組織およびバイオマテリアルのイメージング向けの最先端の顕微鏡ツールの開発と応用にフォーカスしています。

Christel Genoud, Ph.D

Senior Lecturer, Faculty of Biology and Medicine & CEO of the Dubochet Center for Imaging EPFL and Universities of Lausanne, Geneva, and Bern, Switzerland

Christel Genoud博士は、神経科学の経歴を持つ電子顕微鏡学者です。ローザンヌ大学で学び、Graham Knott氏の指揮下で電子顕微鏡検査によるマウスの大脳皮質の可塑性の研究で博士号を取得しました。その後、産業界に進み企業に勤務し、W. Denk氏が開発したミクロトームから発想を得たvolumeSEM技術の開発に着手しました。2008年、バーゼルのFriedrich Miescher Institute(FMI、バーゼル大学付属Novartis Research Foundation)に入り、volumeSEM技術にフォーカスしたEM施設を作りました。2016年から2020年までは、施設の創設に貢献しているNovartisと共有しているFMIのcryo-EM施設の運営にも関与しました。2020年からは、ローザンヌ大学の電子顕微鏡施設で指揮を執り、2022年には、ローザンヌ大学、ジュネーブ大学およびベルン大学の3つの大学とEPFLのプラットフォーム機能を持つ複数の研究機関からなるクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)センターであるDubochet Center for ImagingのCEOにノミネートされました。

Corrado Cali, Ph.D.

Associate Professor, Department of Neuroscience University of Turin, Italy

Corrado Calì博士は、イタリアのトリノ工科大学で電子技術者としての教育を受けました。2006年、神経科学に興味を持つようになったEPFL(ローザンヌ、スイス)のHenry Markram氏の研究室で理学修士号を取得しました。同年、UNIL(ローザンヌ大学、ローザンヌ、スイス)のPaola Bezzi氏の研究室に加わり、2012年に博士号を取得しました。博士の研究は、神経作動性化合物(いわゆるグリア伝達物質)の放出によるシナプス伝達の調節における星状膠細胞の生理学的役割の解明にフォーカスしています。最先端の電子顕微鏡技術のスキルを強化したGraham Knott氏の研究室でポスドクフェローとして従事した1年後、KAUST(サウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学、ツワル、サウジアラビア)のPierre Magistretti氏の研究室に入りました。ここでは、形態学と3Dイメージングアプローチによるニューロンに対する星状膠細胞の代謝サポートの機序を研究しました。特に、神経科学におけるVR(バーチャル・リアリティ)の使用を先駆けて実施し、連続切片の電子顕微鏡観察からCNS(中枢神経系)の疎密な再構築の探索的分析を目的としたサイエンティフィック・ビジュアライゼーション(科学的な視覚化)手法を積極的に探索しています。博士は、3Dによる視覚化と拡張現実への関心が高まり、脳神経外科のトレーニングと実務をサポートして向上させるための、より臨床にフォーカスした、拡張現実の医療機器を開発する会社、Intravides(トリノ、イタリア)を設立するに至りました。2020年2月からは、トリノ大学(イタリア)の神経科学部に入り、現在は人体解剖学の准教授として活動しています。

Jean Daraspe

Expert Scientist, Deputy Head Universite de Lausanne

Jean氏は2005年、パリ第11大学で共焦点顕微鏡を用いて植物科学の修士号を取得し、フランス、サクレーのCEAのJean-Marc Verbavatz博士の研究チームに参加して、電子顕微鏡の知識を身に付けました。2008年にはリサーチ・サイエンティストとしてEMFに入り、透過電子顕微鏡検査(TEM)の試料作成とイメージングのため、EMFで使用される試料の作製のあらゆる面を担当しており、数年間にわたる生体試料を用いた実務経験があります。生体試料の電子顕微鏡による画像取得と分析の自動化のための情報科学ツールの開発にも関わっています。Jean氏は、施設が開催するワークショップのマンツーマンのハンズオントレーニングセッションで電子顕微鏡ユーザーをトレーニングしています。

Jemima Burden, Ph.D

Head of Electron Microscopy, University College London

Jemima博士はユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の分子細胞生物学研究所(LMCB)の電子顕微鏡のヘッドです。博士は、バース大学で理学士号を取得し、顕微鏡観察に興味を持つきっかけとなったインペリアル・カレッジ・ロンドンで博士号を取得し、その後LMCBで電子顕微鏡を専門としています。

Ian White, Ph.D

Deputy Head of Electron Microscopy, LMCB

Ian博士はLMCBの電子顕微鏡の副ヘッドです。博士はリーズ大学で博士号を取得し、シェフィールド大学でポスドクのポジションを得ました。その後、UCLに移り、そこで生物学の電子顕微鏡検査に関する技術を学び始めた後、専門家としてLMCBに入りました。

Laura Matino

Research fellow, School of Medicine and Surgery, Università degli studi di Milano Bicocca

Laura Matino氏は、フェデリコ2世ナポリ大学で医用生体工学を学び、2017年に理学修士号を取得しました。その後、Center of Advanced Biomaterials for Healthcare(ナポリのイタリア技術研究所)の組織-電子技術の研究グループに博士号の学生として入り、マクロ構造とナノ構造のプラットフォームとの相互作用からの神経作用の新たな側面を解明しています。博士号の間に光学および電子顕微鏡両方の技術の知識を身に付けました。その後、Bicocca School of Medicine and Surgery(ミラノ・ビコッカ大学)のGuido Cavaletti医学博士の研究チームに入った後、Volume EMのスキルに磨きをかけ、生体試料の作製、末梢神経組織の連続切片の電子顕微鏡イメージングからの画像取得および3D再構築の最適化を実現しました。

Luke Noon, Ph.D.

Principal Investigator, CIPF research institute

Luke Noon博士は、CIPF研究所(バレンシア、スペイン)のMetabolic Growth Signals and Regenerative Medicine Laboratoryの主任研究員兼ヘッドです。博士の研究は、代謝性疾患が組織の恒常性と創傷治癒に及ぼす影響にフォーカスしており、特に末梢神経支配障害の再生の変化に重点を置いています。Luke博士は動物学者としてトレーニングを受けた後、内分泌学および細胞/組織生物学に移行し、シュワン細胞、糖尿病や肝疾患の動物モデルにおける専門性を身に付けました。博士は、英国(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)、スペイン(CIBERDEM、バレンシア)および米国(マウントサイナイ医科大学、ニューヨーク)でポスドクのポジションを得ています。このウェビナーでは、Luke博士が、MRC Laboratory for Molecular Cell Biology(UCL、ロンドン)のJemima Burden氏とAlison Lloyd教授との緊密な協力で実施した末梢神経のネットワークのマッピングのための新しい方法論の開発において、AT-SEMを用いて実施したことが重要なステップであったことを説明します。

Chris Parmenter, Ph.D.

Editor-in-chief Microscopy and Analysis, Wiley

Chris博士は、ハル大学で単位を取った高学歴の化学者で、ドイツのRöhm GmbHでindustrial placementとしての企業実習の経験があります。ウォーリック大学での博士としての期間中、疎水性・親水性ブロック共重合体の合成と特性評価を実施しました。その後、電子顕微鏡でポスドクのポジションを得ました。現在は、Nottingham Nanotechnology and Nanoscience Centreの研究官で、FEI Quanta 3D FIB-SEM装置を担当しています。博士の研究は、ナノスケールの分子、粒子、デバイスおよび構造の自己集合に重点を置いています。

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:ウェビナー1~6は、2024年1月~6月に1か月に1本ずつ公開されます。

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