• レンズコンセプト

    すべての精巧部品を補って余りある技術

    光学系は、精巧なガラスや精緻な内部機構だけではありません。180種類を超えるガラスと緻密な光学的計算によって、光学系コンセプトが形成されます。したがってカールツァイス製品は、鮮明さのFLコンセプト、色を中和するHDコンセプト、比類ない明るさのHTコンセプトのいずれかを基本にしています。他に例を見ない視覚体験とともに、光学系における当社の専門技術をぜひご利用ください。(多数のコンセプト)

    屈折と色分散

    光がガラスの表面に斜めに当たってそのガラスを通過するとき、光の方向が変わります。この"屈折"を利用して、光学系設計者は光の経路を制御します。

    設計者はレンズを巧みに組み合わせて双眼鏡やカメラレンズなどの機器を作り出します。これらの機器では、できる限り良質のコントラストとディテールを持つ像が得られます。

    しかし、光が分散するときは少々厄介な現象が起こります。つまり、それぞれの色が違う方向へ進むため、白色光はすべての色に分散します。

    この"分散"によって、コントラストが高い交差部分では色収差が生じ、像が歪みます。その結果、像に色のにじみができます。太陽光線が雨滴に当たって反射するときにも、これと同じ現象が起こります。そうして虹ができ、スペクトルのすべての色が、暗い赤からオレンジ、黄、緑、青、藍、紫の順に並んで表示されるのです。ツァイスは非常に複雑な光学系コンセプトによってこの現象を最小限に抑え、精細な視覚体験を実現します。

    屈折率とアッベ数

    レンズの"屈折率"によって、光がガラスに当たったときに直進方向からどれくらいそれるかがわかります。例えば屈折率の高いガラスからは、重度の視力障害を矯正する眼鏡用に、平らで薄いレンズを作ることができます。屈折率が高いほど、悪影響を及ぼす色の分散度は高くなります。これら2つの特性、すなわちガラスの屈折と分散の関係はアッベ数で表されます。光学的観点から"高品質"と見なされるガラスは、アッベ数が高いガラスです。

    この名称は、カールツァイス工場創業時の共同経営者であったErnst Abbe(エルンスト・アッベ)にちなんだものです。アッベはその厳正な仕事ぶりと社会貢献で有名でした。

    複数のレンズで色収差を防止

    "発散レンズ"は中央が周縁部よりも薄くなっており、このレンズを通して見ると物体が小さく見えます。"収束レンズ"は中央が周縁部よりも厚くなっています。このレンズは拡大鏡として使用できます。正確な像を作りますが、あまり良質の像ではありません。

    光学系の専門家は、収束レンズと発散レンズを正しく組み合わせて、一方の誤差をもう一方(逆)の誤差で補うことができます。このように最低2枚のレンズを用いたシステムは、"アクロマート"として知られています。ただし、実際に良質の像を得るには、さらに多数のレンズを使用する必要があります。例えばVictory 10x32 T* FLには、両側にそれぞれ11枚のレンズと、それに加えてプリズムが使用されています。これにより、光学的収差のない状態で自然を楽しむことができます。

  • ZEISS HT

    透過率の追及:ZEISS HT

    精細で明るい像を実現する高い透過率は、絶えず画期的な新製品を打ち出しているカールツァイスの専門技術における中核的分野の一つです。すべては"光学部品の光透過率を向上させる加工"から始まりました。カールツァイスはこの技術で1935年に特許を出願しました。その過程で、コーティング技術の基礎が築かれました。

    その後さらに技術革新が進んだ結果、性能を決定づける機能、すなわち像の明るさは常に当社の重要事項となっています。そのために、ツァイス双眼鏡には大型のアッベ・ケーニッヒプリズムが搭載されています。このプリズムは光を吸収するミラーがなくても機能し、現在使用可能なプリズムの中で最も明るいルーフプリズムシステムです。


    Victory FL双眼鏡は長年にわたり、実現可能な最大のコントラストと明るさの基準となっています。ガラス素材を通過するときの吸収による光の損失は、他に方法がなかったため部分的に許容されていました。しかしその後、カールツァイス財団の関連会社であるSCHOTT(ショット)AGが"HT"、すなわち高透過率の特性を付加した新しい光学レンズを開発し、これがZEISS HT製品が考案されるきっかけとなりました。

     

    ショットのHTガラスを採用した革新的な光学設計のZEISS HTは、これまでにない水準の透過率性能を発揮し、非常に暗い薄暮時であっても細部まではっきりとした像を作ります。新しいHT双眼鏡は、FLモデルの利点もすべて兼ね備えています。例えば、フローライトレンズによる最高のイメージシャープネスと色補正、先進的なT*コーティング、低光量条件に対応できる反転プリズム、天候を問わず鮮明な視界が得られるLotuTec®などです。しかし真の成果は、これらのレンズとその比類ない明るさが、光透過率の分野に95%という新基準を打ち立てたことにあります。

  • ZEISS HD

    ZEISS HD

    色収差を防止する専用レンズ

    光学系設計者は、レンズの組み合わせだけで像質を高める代わりに、分散率がきわめて低い(科学的には"異常部分分散"として知られる)レンズを追加することを好みます。これは"EDガラス"と一般に呼ばれているもので、EDはExtra low Dispersion(超低分散)を意味します。

    ZEISS Conquest HD双眼鏡にはこのタイプのレンズが使用されています。このレンズは、非常に高い解像力(HD =高解像力)とバランスのよい色の再現性が特徴です。精緻なディテールがすぐれたシャープネスで映し出され、自然を鮮明かつありのままの色で観察できます。

  • ZEISS FL

    ZEISS FL

    最後のディテールまで鮮やか

    自然界の光は"白色光"であり、スペクトルのすべての色が混じり合っています。これらの色は、レンズ、プリズム、および水滴を通過するときに別々の方向へ屈折します。専門家はこれを"分散"と呼びます。例えば、光がスペクトルの色に分散することによって虹が発生します。しかし光学的な像の場合、この効果はにじみの原因となり、像の輪郭に好ましくない色の縁取りができます。その結果、ディテールを識別しにくくなります。

    光学系の高度な結合

    フリンジ現象は、異なるガラス素材をうまく組み合わせることで大幅に緩和できます。これは"アクロマート"光学系として知られ、現在では観察用光学系や写真撮影の大半の用途で標準的に使用されています。しかし、それでも色収差は若干残ります。
    最適化と改善をさらに進めるには、"異常部分分散"と呼ばれる特殊なタイプのガラスを使うしか方法はありません。このガラスを使用すると、好ましくない色分散は、他のどのガラスタイプの場合よりも格段に少なくなります。この特殊な材質の一つが、フローライトを含んだガラスです。このタイプのガラスは、光学的にはほとんど欠点がありませんが、非常に高価で、より高度な加工が求められます。

    抜群の像質と明るさを保証

    光学結像の品質は、レンズのガラス素材だけで決まるわけではありません。適切なコーティング技術に加え、高度に調整された光学系にフローライトレンズが丁寧に組み込まれたとき、初めてそれらすべての要素が融合されて、カールツァイス独自の"FLコンセプト"が形成されます。これによって卓越した像質と明るさが保証されます。
    このコンセプトが持つすぐれた性能は、きわめて高度な光学系、なかでも特大レンズ径、超高倍率、超広視界向けの製品で実証されています。"FL品質シール"はスポッティングスコープおよび双眼鏡分野の高級品のみに付けられており、観察用光学系分野の基準クラスとなっています。


    適切なガラス素材以外の要件

    フローライトイオンを含んだガラスはフローライト系ガラスまたは"FL"としても知られ、色の再現性において非常にすぐれた特性を持っています。すべてのZEISS Victory FL製品には、このタイプのガラスが採用されています。ただし、"ZEISS FL"のラベルが付けられるには、適切なガラス素材を使用するだけでなく、その製品がコンセプト全体に適合していなければなりません。

    これには、FLレンズを基盤としながらも、特に特殊ガラス素材やカールツァイスT*マルチコーティングおよびLotuTec®などのコーティング加工など、他の特徴も併せ持った包括的な光学系が含まれます。そのためには、製造過程における許容誤差がきわめて低いこと、そして、内部機構が無傷で実装されることが不可欠です。そうして初めて、それぞれのツァイスFLは期待どおりの高い基準、すなわち高い解像力、微細な構造を細部まで精巧に映し出された像、微妙な色の違いの識別、低光量な条件下でもハイコントラストな結像、色収差のない鮮明な光の透過、卓越した像の明るさなどの要件を満たすことができます。