X線CTの仕組み:基本概念とコンピュータ断層撮影

X線CTの基本原理

X線コンピュータ断層撮影(CT)は、医療から製造業に至るまで、幅広い分野で活用されている技術です。この技術は、X線の物質透過性と物体の密度差を利用し、内部構造を詳細に映し出すことができます。具体的には、骨折の診断、製品の品質検査、製造プロセスの改善など、多様な用途に役立てられています。

X線CTの基本原理

X線CTの仕組み

X線CTは、X線が物質に透過する際、密度の高い物質ほど透過しにくいという特性を利用しています。装置は、X線源から発せられるX線を対象物に照射し、その透過したX線を検出器で捉えます。X線源と検出器は、対象物の周囲に配置され一部の装置ではX線源は対象物の周りを回転しながら動作します。他にはX線源と検出器は固定されており、対象物を載せたテーブルが回転動作を行う装置もあります。

 

X線CT装置の構造

X線源と検出器の動作詳細

X線源は、対象物に対して多角度からX線を照射します。検出器は、対象物のさまざまな角度からのX線強度を捉え、それをデータとしてコンピュータに送信します。これにより、対象物の密度の違いに基づいて、詳細な内部画像を得ることができます。

X線CTの動作詳細

X線CTの操作プロセス

X線CTの操作手順は以下の通りです:

1. 対象物の準備
対象物を適切に装置に配置し、駆動する種類の装置であればX線源と検出器の位置を調整します。対象物の大きさや形状、X線の透過性に応じて、最適な位置や角度を見極める必要があります。配置が不適切だと、画像に歪みやぼやけが生じる恐れがあります。

2. X線の照射
回転速度、角度、方向によって画像の品質や解像度が変わります。回転速度が速いと撮影時間が短縮されますが、画像のノイズが増加する可能性もあります。回転方向は、時計回りや反時計回りのどちらでも可能ですが、画像再構成アルゴリズムに合わせて設定する必要があります。

3. データ収集
検出器は透過したX線を捉え、データを収集しコンピュータに送信します。検出器の種類や数、配置によっても、画像の品質や解像度が変わります。検出器は、X線の強度やエネルギーを測定することができます。X線の強度は、対象物の吸収係数の分布に関係します。X線のエネルギーは、対象物の物質の種類に関係します。

4. 画像の再構成
取得したデータを基に、対象物の内部構造を3D画像として再構成します。画像再構成アルゴリズムや画像処理技術によって、画像の品質や解像度が変わります。画像再構成アルゴリズムは、X線の投影データから対象物の吸収係数の分布を求める数学的な手法です。画像処理技術は、画像のノイズや歪みを除去したり、画像の明暗やコントラストを調整したりする技術です。

X線CT装置における再構成

X線CT装置における再構成

X線CTの画像処理技術

画像再構成アルゴリズム
X線CTにおける画像再構成アルゴリズムは、対象物の内部構造を3D画像として詳細に再現します。主な手法としては、「フィルタ補正逆投影法」と「反復再構成法」があります。フィルタ補正逆投影法では、X線の投影データにフィルタ関数を適用し、ノイズを除去した後に逆投影を行って画像を再構成します。一方、反復再構成法では、初期画像を設定し、投影データとの誤差を最小化するように画像を逐次更新していきます。フィルタ補正逆投影法は計算速度の速さが利点ですが、ノイズに対して弱い点が欠点です。反対に、反復再構成法はノイズに強いものの、計算量が多くなるというデメリットがあります。

フィルタリング技術とコントラスト強調
フィルタリング技術は、画像のノイズを除去し、エッジを強調する技術です。コントラスト強調は、画像の明暗差を強化する技術です。これらの技術により、より高品質な画像を提供します。フィルタリング技術には、空間フィルタリングと周波数フィルタリングの2種類があります。空間フィルタリングは、画像の各画素に対して周囲の画素との関係を用いて新しい画素値を決める方法です。周波数フィルタリングは、画像のフーリエ変換に対してフィルタ関数をかけて逆変換する方法です。コントラスト強調には、ヒストグラム平坦化やガンマ補正などの方法があります。ヒストグラム平坦化は、画像のヒストグラムを均一に分布させることで画像のコントラストを高める方法です。ガンマ補正は、画像の画素値に対して非線形な変換を行うことで画像のコントラストを調整する方法です。

AIや深層学習技術の利用
最近では、AIや深層学習技術がX線CT画質の品質向上に大きく貢献しています。これらの技術は、画像の特徴を自動的に抽出し、効率的な画像処理を可能にします。AIや深層学習技術の利用例として、以下のようなものがあります。

・画像再構成
X線の投影データから画像を再構成する際に、AIや深層学習技術を用いて画像の品質を向上させる方法です。例えば、低線量の投影データから高品質の画像の生成や、少ない角度の投影データから高品質の画像を生成ができます 。これらの方法は、画像のノイズや歪みを低減し、画像の精度や解像度を高めることができます。

・画像分割
画像を意味のある領域に分割する際に、AIや深層学習技術を用いて画像の特徴を抽出し、分割の精度を向上させる方法です。例えば、医療画像において、腫瘍や臓器などの領域を正確に分割する方法や、製造画像において、欠陥や異物などの領域を正確に分割する方法などがあります 。これらの方法は、画像の解釈や分析を容易にすることができます。

・画像強化
画像の品質や見た目を改善する際に、AIや深層学習技術を用いて画像の特徴を補完し、強化の効果を向上させる方法です。例えば、画像の拡大や超解像、画像の補完や修復、画像の色調や明度の調整などがあります 。これらの方法は、画像の視覚的な魅力や情報量を高めることができます。


以上のように、X線CTの画像処理技術は、AIと深層学習の進化により、その精度と効率性が飛躍的に向上しています。これらの技術は、今後も様々な分野で重要な役割を果たし続けることでしょう。

 

製造業でのX線CT技術の用途例

品質検査におけるX線CTの重要性
製造業でのX線CTの最も一般的な用途は品質検査です。この技術を活用することで、鋳造品や成形品の内部に隠れた欠陥や異物を正確に特定し、製品の品質向上に大きく貢献します。

製造プロセスの改善への寄与
X線CTは製品製造プロセスの最適化にも役立ちます。例えば、プラスチック成形工程では、X線CTを使用して金型の設計や成形条件を分析し、最適な条件を特定することができます。これにより、生産性の向上、コスト削減など、製造プロセス全体の効率化が達成されます。

新製品開発におけるX線CTの役割
新製品開発段階においても、X線CTは重要なツールです。試作品の内部構造を詳細に視覚化することで、設計上の問題点を迅速かつ正確に特定し、修正することが可能です。これにより、製品開発サイクルの短縮と製品品質の向上が図られます。

X線CTの適用工程

X線CTの適用工程

安全性に関する情報

X線CTの使用においては、被曝量の管理が重要です。特に医療分野においては、患者の被曝量を最小限に抑えるための工夫が求められます。製造業においても、作業者の安全を確保し、適切な安全対策を講じることが重要です。

当社のX線CT装置は、ドイツ連邦放射線防護局のガイドラインに準拠しています。
ドイツのX線条例では、放射線防護カバーの表面から0.1 mの距離で、局所線量率が1 μSv/hを超えてはならないとされていますが、ZEISSのX線CT装置では、距離が0.05 mであれば、この制限値を超えないことが保証されています。当社装置の筐体には、特別な搬入位置があり、オペレータが機械室に入ることはありません。ワークは自動的に測定位置に移動し、測定プロセスも自動的に開始されます。その結果生じる放射線被曝量は極めて低いため、当社装置においては特段作業への制限は必要はありません。

まとめと今後の展望

X線CT技術は医療だけでなく、製造業においても欠かせない技術として位置づけられています。技術の進歩に伴い、より高度な画像取得や画像処理が可能になり、新たな応用領域が期待されています。AIや深層学習技術の活用による画質向上、パーソナライズド医療への貢献など、この分野の将来は極めて明るいと考えられます。

 

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