埼玉県産業技術総合センター

ZEISS METROTOM 800 130kV 活用事例

埼玉県産業技術総合センターでは、中小企業の技術開発・新製品開発を支援するため、ZEISS METROTOM 800 130kVを導入。技術支援における依頼試験と機器利用の両面でZEISS METROTOM 800 130kVはフル稼働している。今回、その導入経緯と効果について生産技術・事業化支援室 機械技術担当 専門研究員の増子 陽一氏に詳しく伺った。

埼玉県産業技術総合センターの概要

依頼試験と機器利用を展開する技術支援

埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)は、埼玉県が運営する公設試験研究機関。県内産業の技術力強化と振興・発展を図るため、SAITECは技術支援・研究開発支援・事業化支援の3つを掲げて企業等の技術開発・新製品開発を支援している。
3つの支援のなかで大きな柱となっている技術支援は、依頼試験と機器利用の2つで展開している。依頼試験は企業等から依頼を受け、製品製造・技術開発などに関する原材料や製品について必要な分析・測定などの各種試験を行うもの。SAITEC職員が試験を行い、試験終了後に企業等に対して成績書を発行している。
機器利用はSAITECが保有する機器を有料で貸し出すサービス。利用する場合はSAITECに足を運び、利用者が機器の操作を行う。2019年度の実績は依頼試験が26,971件、機器利用が67,639時間にのぼる。
SAITECが保有する機器は設計・加工機器、表面観察機器、強度試験機器、精密測定機器、測定機器、試料調製機器、電気・電子測定機器、評価試験機器、分析機器など。X線CT装置のZEISS METROTOM 800 130kVは精密測定機器に属している。「ZEISSMETROTOM 800 130kVを担当するのは、機械技術担当の精密測定グループに属している私たちのメンバー。維持管理などの事務的な手続きは私が行っています。」と増子氏は語る。

ZEISS METROTOM 800 130kVの導入背景

非接触で高精度に測定したいというニーズが高まる

SAITECにZEISS METROTOM 800 130kVが導入されたのは2013年度のこと。それまでX線CT装置は導入しておらず、内部形状を高精度に測定する手段がなかった。「当時、小径穴の内部を調べたいといった非破壊検査の要望や、接触式の三次元測定機では測定が難しい樹脂・プラスチック製品や柔らかいゴム製品などが増えていました。また、自動車関係では3Dでの評価が当たり前になり、同時にリバースエンジニアリングが求められるようになりました。こうした非接触で高精度に測定したいというニーズが高まったため、X線CT装置を導入する運びになった次第です。」(増子氏)

SAITECのエントランス

生産技術・事業化支援室 機械技術担当 専門研究員 増子 陽一氏

X線CT装置の選定

公的な精度保証規格に準拠した安心感

X線CT装置を導入するにあたり、SAITECがもっとも重要視したのが精度保証の有無だ。「我々は公設試験研究機関ですから、測定には正確さが求められます。公的な規格にもとづいた精度保証があれば、この正確さの担保になるため、精度保証はもっとも重要視した部分となります。」(増子氏)
また、サポート面を考慮し、日本で正式に販売されている製品を要件とした。選定したZEISS METROTOM 800 130kVは、ドイツでX線CTの寸法計測における保証精度の規格が制定された際、いち早く規格を満たして市場に投入されたモデルである。
「カールツァイスいわく、ドイツ工業会の規格VDI/VDE 2630に準じておりMPESD、MPEE、PF、PSの精度が保証されているとのこと。公的な精度保証規格に準拠しているというお墨付きは、大きな安心感があります。我々も臆することなくアナウンスできますし、お客様にもご納得いただけます。」(増子氏)

ZEISS METROTOM 800 130kVの導入効果

利用する場合の予約は約2週間待ちの状況

24時間365日、常に20℃±1℃という精密測定に最適な環境に設置されたZEISS METROTOM 800 130kVは、SAITECのなかでも需要の高い精密測定機器のひとつとして認知されている。自動車関係、家電関係、医療関係、食品関係、バイオ関係、繊維関係などの企業はもちろん、さまざまな研究機関、教育機関まで頻繁に依頼試験や機器利用に訪れているという。こうした状況を踏まえ、増子氏はZEISS METROTOM 800 130kVの業務面における導入効果を以下のように語った。

<いつも順番待ちの人気>
「現在はコロナ禍ということもあって落ち着いていますが、それでも依頼試験や機器利用は約2週間待ちの状況です。コロナ禍以前ですと、3 ~ 4週間待ちは当たり前でした。人気の理由のひとつには、精密測定機器にもかかわらず、オペレーションが容易な点が挙げられると思います。なお、機器利用の場合、初めての方は操作研修を受けていただいてライセンスを取得する必要があります。実用性を考えた簡単なマニュアルも用意しています。」(増子氏)

<測定プログラムの生成が簡単なZEISS CALYPSO>
「汎用測定ソフトウェアのZEISS CALYPSOも使いやすいです。METROTOMのデータを直接読み込み、測定プログラムのアライメントを行うだけで自動的に測定データを得られるなど、測定プログラムの生成が簡単なところが良いですね。」(増子氏)
業務面のほか、機能面ではZEISS METROTOM 800 130kVを以下のように評価している。

<樹脂だけでなく軽金属も測定可能>
「測定は樹脂・プラスチック関係がメインですが、利用するなかで軽金属もスキャンできることが分かりました。例えば、アルミニウム製のラジエーターをスキャンすると、中の詰まり具合や漏れ、腐食なども把握することができます。」(増子氏)

<そのまま読み込めるデータ>
「他のX線CT装置の場合、スキャンしたあとに画像を読み込んで再構成を行う手間がありますが、ZEISS METROTOM 800 130kVのデータは、そのままZEISS CALYPSOで読み込めます。再構成まで行ってくれるのは、ユーザビリティが高いと感じます。」(増子氏)

ライセンスの取得に用意しているマニュアル

ライセンスの取得に用意しているマニュアル

今後の期待

カールツァイスの技術に期待

業務面でも機能面でも満足していると語る増子氏。最後にカールツァイスのサポートや今後の期待について語っていただいた。
「カールツァイスは少数精鋭というところもあって、営業やテクニカル担当の方は大変だろうと感じます。リソースが限られているなか、問い合わせればすぐに返してくれるのはありがたいですね。要望としては、遠い位置からでも高解像度で撮れる製品があると、よりニーズに応えられるのではないでしょうか。カールツァイスの製品でいうと、METROTOMとXradiaが融合した感じですね。今後も期待しています。」(増子氏)

埼玉県産業技術総合センターについて

埼玉県が運営する公設試験研究機関。現在は本所(川口市)および北部研究所(熊谷市)の2拠点で運営している。
技術支援・研究開発支援・事業化支援、またSAITEC DESIGN PARTNER(SDP)によるデザイン支援も大きな特色。デザイン相談からデザイン業務の実施まで、内容に応じた支援を行っている。

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