東京大学 精密工学専攻
ZEISS METROTOM 1500 225kV G1 活用事例
高精度のモデリング手法を研究する東京大学 精密工学専攻 教授の鈴木宏正氏は、モデリングにカールツァイスの計測用X線CT装置「ZEISS METROTOM 1500」を活用している。測定精度の保証により、「シミュレーションを前提にしたモデリングが可能になった」という。鈴木氏の研究内容や「ZEISS METROTOM 1500」の活用について詳しくお聞きした。

鈴木氏の活動
ものづくりにデジタルを活用するメリットの1つは、仮想空間でシミュレーションを繰り返せることにある。現物を作る前に仮想の環境で十分な検証をすますことができれば、検証を繰り返すために現物を何度も作るような無駄が省けるのだ。
しかし、仮想空間に再現したモノの精度が低いようでは、シミュレーションの信頼度が薄れてしまう。CADの活用などで設計のデジタル化が進んでも、それを実際のモノにする製造過程では偏差が生まれ、微調整が必要になることが多い。その誤差がデジタルの設計情報に反映されず、その後のものづくりに活かすことができない。あるいは、サプライヤーから調達した部品のため、そもそもデジタル情報が自社になく再現できない場合もある。そうした課題を解決するために取り組んでいるのが鈴木氏の研究だ。
「リアルのモノを高精度で測定してデジタルでモデリングし、シミュレーションに活用できるデータ作りの手法を研究しています。製品の測定により実物に忠実な設計情報を作ることができ、逆に、それによって設計情報に忠実な実物を作る、最適なパラメータの発見が可能になります。それだけでなく、試作や生産準備の際に行った補正をマスタのCADデータにフィードバックし、金型を作り直すときなどに生かすことができます。また、CADで図面を起こす前にクレイモデルを作るような製品でも、作ったモデルをデジタル化し、それを起点にCADで設計作業を始めることもできるのです」(鈴木氏)
鈴木氏はそのデジタル化の手法として、レーザースキャナや接触式のスキャナなどを活用してきたが、大きな限界があった。測定対象物の「内部」を測ることができない点だ。

外部の形状だけでは不十分
レーザースキャナは複雑な形状が効率的に計測できる一方で、基本的に光が当たるところしか測れず、対象物の位置を変えて何度もスキャンし直す必要がある。接触式でのスキャニングも同様に、外部に露出した部分しか測ることができないため、内部に複雑な形状や空洞があるような製品には不向きだ。また、点で測るため精度が高い一方で、測定には時間がかかる。
「例えば、対象物の素材内部に閉じ込められた空洞になると、いずれの方法でもまったく測ることができませんでした。こうした空洞は鋳造や射出成形の際に発生することがあり、製品の強度に影響します。そのためにも内部の空洞の存在を、その場所や大きさともに見つけることは重要ですが、対象物を輪切りにしても、見つかるのはその一部でしかないうえに、輪切りにしてしまえば当然ながら製品として使い物にならなくなります」(鈴木氏)
対象物の内部を映し出す方法としては、医療の現場で使われるX線CT装置もある。人間の体の中をレントゲン撮影するのと同じ方法で、機械や部品を透視することは可能だが、医療用の装置では、画像から正しい寸法を得ることは難しい。内部に空洞があっても場所や大きさを正確に知ることはできず、製品の強度への影響を分析しようとしても、そもそも画像の精度の保証がないために分析の信頼性が不十分になるからだ。
しかし対象物を切断したり分解したりしなくても、内部を見ることができるX線CTは、確かに有効な方法であることは間違いない。X線CTでシミュレーションに使えるようなモデルを再現することはできないか。その手法を探していた鈴木氏が着目したのが、カールツァイスの計測用X線CT装置「ZEISS METROTOM」だ。

測定の幅が広がる
鈴木氏がZEISS METROTOMに着目したのは、ZEISS METROTOMが寸法の精度保証を行っている点にある。X線CTで撮影した画像の中の寸法を正確に得られることで、正確にモデルを再現することが可能になるからだ。カールツァイスはX線CTの寸法保証の規格が制定された2007年に、いち早くその規格を満たしたX線CT装置としてZEISS METROTOMを市場投入した。
鈴木氏はテストとしてZEISS METROTOM 800を実際に様々な機械部品などの測定に活用。その結果、モデリングに必要な精度の高い情報を得られただけでなく、「従来の方法では測れない大きなモノや、アルミ素材のモノも測ることができるようになりました」(鈴木氏)。
効果を確認した鈴木氏は2015年、さらに大型のモノの測定が可能な「ZEISS METROTOM 1500」を導入。機械の部品単体だけでなく製品として組み上がった状態の機器を測ることができるようになり、さらに活用の幅が広がったという。精度保証というZEISS METROTOMの特徴を生かし、「CAD図面と成型品の微妙な差異も、正確に知ることが可能になりました」と鈴木氏はその効果を語る。
ZEISS METROTOM 1500の効果は鈴木氏の研究室だけでなく、大学の他の学科にも知れ渡るようになった。現在は学内の他の教員や研究者も活用しているという。また、産学連携の共同研究でも活用している。
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